Lynxx LC01 クローラーシャーシ概要

 LC01の概要について、Instagramでは載せきれないもの中心に解説したいと思います。

    試作3号車、ドライバーフィギュアはシャシ側に固定
    • 1/10スケールクローラーシャーシ
    • ホイールベース 240-280mm程度に対応(設計時242mm)
    • 380モーター専用
    • LiFe2セル、またはLiPo2セルバッテリー
    • シャフト、デフギア類はタミヤ CC-02用を流用
    • 新規ギアボックス、06モジュールギア
    • 樹脂パーツはすべて3Dプリント製
    • カーボンシャーシレール

    コンセプトは、「1/10 軽規格程度のスケールクローラー」

    軽自動車枠の1/10スケールという想定で、モータは380モータ専用としました。ホイールベースはショートホイールベースとしました。540モータ以上への対応や、ホイールベース313mm以上への拡張予定はありません。(ElementかAxialを買った方が早い)

    元々はタミヤ CC-02の問題個所を修正するつもりでパーツキットを作っていましたが、気がついたら金属パーツ以外は新規に設計してしまいました。なお、設計に当たっては以下の点を重視しています。

    • 既存パーツとの互換性(ドライブシャフト、リンク、ショックなど)
    • 軽量化、低重心化
    • 整備性
    • 日本国内でのパーツ入手性の良さ(金属部品はすべてタミヤ製を使用)

    ホイールベース、シャシレール

    シャシ底面、WB242mmの試作1号車

    ホイールベースは242mmのショートホイールベース(SWB)で設計しています。240mmから260mm程度までリンクロッドを変更することで可変可能です。リアリンクを大きく延長すれば280mm程度までは可能と思われますが、シャシレール長は300mmなので、この長さを超えるホイールベースはSORRCAレギュレーション違反になるので注意が必要です。ホイールベースを短くする場合、ドライブシャフトの角度がきつくなりすぎるため240mmが下限です。

    タミヤ、MSTなどSWBボディの大半は242mmなので標準のリンクロッドで搭載できます。

    カーボン製シャシレール、前後メンバーとスキッドプレート、バッテリートレー

    シャシレールはカーボン製とし、左右完全に同一にしてパーツ互換性に配慮しました。初期の試作ではアルミアングル材を用いましたが、カーボンにすることで大幅に軽量化できました。しかしながら剛性が低下したため、レールは再設計するかもしれません。ほとんどの市販クローラーではスチール製のCチャンネルレールが用いられており、剛性という点では良い選択肢になるのですが、プレス生産のため少量生産には向いていません。

    なお、今回のFDMプリント樹脂はすべてPETGを用いており、充填率は一部を除き20%としています。そのため樹脂部品単体では軽量で強度と剛性は高くなっています。FDMプリント樹脂以外は、MJFによるPA11と光造形方式の樹脂を使用しています。

    モータ、バッテリ

    RS-385-PH, Mercury Motor製

    380モータは秋月電子で購入できる、カーボンブラシ5スロットのRS-385-PHを標準品としています。1個200円ときわめて安価ですが、スペック上は5スロットとクローラー向けでもあり、テスト走行したところ十分な性能が得られました。もちろん380モータを使用している以上、出力、トルクともノーマルの540にさえ及びません。しかし、クローラーでは全力運転をまずしないという点、3Dプリント品による車重自体の軽量化、低重心化によって走行性能も十分なものが得られています。ただし、SORRCAレギュレーション準拠のコンペティションで540、550モータ搭載車と競う場合は無理があるでしょう。

    車体後部のバッテリートレー

    バッテリについて、今回用いた385PHは電圧範囲3.0V-9.0V、定格6Vなので、タミヤ製LiFeなど6.6Vでの使用を前提としています。最大でもLiPo2セル7.2V程度にとどめる方がよいでしょう。試作車でクローリング走行させたところ、タミヤ LF1100レーシングパック1個で60分以上の稼働時間が得られました。クローラーとしては十分な稼働時間です。

    ステアリング周り

    アッカーマン比1、左右等しい約45°の舵角が得られた

    CC-02の問題点はステアリング周りに集中しています。そのため、フロントを一般的なラテラルロッド+3リンクサスペンションとして設計しました。またアッカーマン比を1とし、ステアリングの外切れを防いでいます。サーボの搭載位置もできる限り中心にしたため、ほとんどのサーボで左右等しいステアリング角度が得られます。

    フロントのリンケージ周り

    試作車ではドッグボーン式のCC-02ストックの金属パーツを用いましたが、ステアリング角度は45度近くまで得られました。CC-02と互換性があるため、サードパーティ製を含めたユニバーサルジョイントにも設計上は対応しています。

    アッカーマン比も1としたためクローラーとして必要十分な舵角と旋回半径が得られました。タミヤ製金属パーツは、本来かなりのポテンシャルがあると思われます。

    なお、クローラーとして低速走行するという前提で、かつ舵角を重視したいため、キャスタ角はつけていません。

    サスペンション

    低重心化とスケール感のため、ショック長は70mm、最大ストローク量は25mmで設計しています。70mmのショックは90mm以上の機種より数が少ないが、各パーツブランドから発売されています。Gmade、MST、Boom Racing製などを用いることができます。

    入手の容易なタミヤ CVDダンパーミニに、タミヤ DT-03フロント用スプリング(赤、ソフト)などバギー用のスプリングを組み合わせてもよいでしょう。この場合、オイルはタミヤ純正では固すぎるため、状況によってはヨコモ製などの100番以下の柔らかいもの、またはクローラー用の2ケタ番手のものを用いると良いでしょう。

    ショックマウントを変更することで、90mm程度の長さのものも搭載できますが、重心が上がることに注意が必要です。

    前後ホーシング

    前後ホーシング

    ドライブシャフトはタミヤ CC-02用を用いています。従って、デフギア、ベベルギア、デフロッカーなどもタミヤCC-02用をそのまま用いることができます。同様にタミヤ製のキット標準ベベルギアを入れるとオープンデフ化することもできますが、クローラーには不要でしょう。タミヤ製の金属部品を用いているため、トレッドはCC-02と同じです。


    試作ホーシングはやや複雑な4分割構造です。印刷物に異方性ができるFDMプリンタの都合上、一体成型は困難でした。長手方向に印刷した上下シェルに、断面方向に印刷したブーツを差し込んでビス固定する方式としました。やや複雑ですが、強度と剛性を確保できました。なおリアの固定用ビスは角度を付け、ホーシング下面のクリアランスを確保しています。

    固定ビスは角度をつけることで下面の突起を極力減らした

    3Dプリント品であるため、上下シェル接合部の気密性はありません。走行中の砂塵程度は防ぐことができましたが、防水性は一切考慮していないので、水没させた場合にはオーバーホールが必要です。

    ホーシングはプリント部品とビスのみだとフロント58g、リア38gしかありません。しかしながらタミヤ製のデフギア、ベベルギアはダイキャスト品で重いため、十分な低重心化が図れます。ショックマウント、リンクマウントはパーツと一体成型としました。

    試作した一体成型ホーシング

    なお、記事作成中に一体成型の新型ホーシングが完成しました。こちらはMJFプリンタでの製造、材質はPA11になります。一体成型のため防塵性と防水性に優れています。デフキャップとベベルギアのキャップのみ別パーツとしました。現在実走テスト中です。

    試作3号車でテスト中の一体成型ホーシング

    トランスミッション

    モータを装着したトランスミッション

    380モータ専用に設計したトランスファ一体型1速トランスミッションを標準装備としました。オーバードライブはありません。スキッドに4本のビスで固定するのみなので、車体から取り外してのメンテナンス性に優れています。

    スキッドへビス4本で固定する

    出力が低い380モータのため、スリッパークラッチは省略しています。構造的には搭載できるようにはしていますが、おそらく不要でしょう。スパーはタミヤ製、ピニオンはタミヤ製を始めとした各社のモジュール06のものを用いることができます。

    ギアとケース、シャフト類

    • ピニオン15T、スパー64T: 最終減速比21.58
    • ピニオン16T、スパー63T: 最終減速比19.92
    • すべて06モジュールギア
    スリッパーは省略したが、構造的には追加も可能

    ギアは精度が得られる光造形方式で出力しています。光造形で3Dプリントしたギアにどの程度の強度があるか全く不明だったというのも、比較的出力が弱い380モータを採用した理由の一つです。光造形よりも強度に優れるが精度が低いFDM方式でもギアを試作しています。こちらでもノイズは大きいものの問題なく動作しました。

    光造形プリンタで出力したギア類

    シャフトは市販アルミ棒を手加工した

    ドライブギアのシャフトのみタミヤCC-02用を用いることができます。他のシャフトは5mmアルミ棒を切断して作製しました。

    プロペラシャフトは前後ともCC-02L用(85mm)を使用する前提です。取り付け部は1/10RCでは標準的なものなので、各社から発売されているシャフトも用いることができます。

    その他

    現状試作のみで量産の予定はありません。用いたタミヤ製金属パーツ(CC02フルベアキット込み)の値段で税別1万円程度です。シャーシレールは少量での試作依頼を出しており、それなりに高くついているので販売するなら1セット4500円程度です。

    モーター込み、タイヤ・サスペンションなしのシャーシキットで実売2万円未満程度に収まるのであれば量産するかもしれません。

    現在、試作車4台分のパーツを作製しており、ボディまで作製して走行可能なのは1号車と3号車の2台のみです。

    試作1号車(WB 242mm) ボディ: WPL D12

    ホイール: タミヤ製1.9インチ、タイヤ: タミヤ製

    試作3号車(WB 252mm) ボディ: タミヤ アーリーブロンコ

    ホイール: 自作1.55インチ、タイヤ: Aliexpress



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